今日はちょっとレアな歯科症例。
ほっぺに穴が開いた2歳のマルチーズ君。
一度歯を疑って奥歯を抜歯したそうですが、
1か月以上たっても治らないとのことで来院しました。
来院少し前に悪化してしまったようですが、
悪化したというわけではなく皮膚がただれて腫れている様子。
それでもよく観察してみると、
穴から持続的に排膿していることが分かります。
膿が出ているようですが、
細菌感染主体ではない雰囲気。
少し前に他の動物病院で1本抜歯した?とのことですが、
まったく良くならないそうです…。
第一印象としての当院での診断は、
'Odontogenic Periorbital Cutaneous Fistulae'
年間でもあまり遭遇しない歯科疾患で、
直訳すると「歯原性眼窩周囲皮膚瘻孔」
Odontogenic 歯原性
Periorbital 眼周囲
Cutaneous 皮膚
Fistulae 瘻孔
日本で統一された診断名あるいは症状名はあるのかどうか?
さて、初診ではまず皮膚の状態を改善するために、
1週間抗菌薬を処方しました。
1週間後の再診、
思った通り穴は全く塞がる気配はありません。
そこで原因と病状把握し、診断に向かうめ、
レントゲンではなく麻酔科でCT検査を実施しました。
すると、頬の骨が破壊されて吸収されているのが、
明瞭に分かります。
正常な左側とは違って、
右は皮膚に向かって瘻孔を形成ている雰囲気がつかめます。
つまりこの歯の歯根の炎症が原因と推測できますので、
そのまま抜歯治療へ進みます。
外観上は骨が溶けているなどとは全くわからないので、
身体検査では診断困難。
CT検査が非常に有効な検査となります。
レントゲンも悪くはありませんが2次元では評価が難しいので、
個人的には断層でチェックできるCTが好みです。
この症例は抜歯のみを行い、
瘻管の切除はしませんでした。
オーナーさんのお財布で行う細胞レベルの診断には興味ないので、
病理検査もナシ。
再診の指示は出さなかったので久しぶり再会となりましたが、
抜歯2か月後の様子がこちら。
すっかり毛も生えて、
半年ぶりにかわいいお顔に戻りました!
歯原性眼窩周囲皮膚瘻孔は人の歯医者さんでは「外歯瘻」というのが同じような病態で、
こちらもなじみはありませんが、
感染後に細菌が消えて、炎症のみが残って骨破壊性炎症に発展してしまうという展開です。
そのため細菌が本質ではないので、
いくら抗菌薬を続けても治りません。
また、今回のようにせっかく抜歯しても、
原因となっている歯でない限り治らないという…。
動物歯科は結局抜歯とはいえ、なかなかやっかいな歯科疾患です。
一応、治療しないでそのままにしていても大きな問題にはなりませんが、
いつまでも分泌物で頬がベトベト汚れます。
ちなみに5年以上放置しているワンちゃんはこんな感じです。
痛い病気ではないので問題はありせんが、
やはりいつまでたっても塞がらずに排膿が続きます。
汚れる以外は何も起きません。
さらに比較として根尖膿瘍という同じような頬の出血症例ですが、
こちらは細菌感染メインの病態なので抗菌薬で治ります。
抗菌薬2週間程度できれいに穴は塞がります。
再発防止に抜歯もよいですが、
シニア犬が殆どですので全身麻酔のリスクを考え、
こちらは内科で治しながらごまかしていく選択をされるオーナ様が当院では大多数です。
何度穴あいても必ず塞がるので、それで良しとしています。
歯原性眼窩周囲皮膚瘻孔はたいてい若齢犬なので、
元気なうちに治療しましょう!
たぶん塞がりませんので!
もぐ動物病院
住所:東京都 日野市 百草 204-1
ガーデンビュー石神D1F
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