盗み食いで急性膵炎!吐かせとけばよかった…

2024/02/19 ブログ

チョコレートやネギのように食べちゃいけないものでなくても、時に危険なことが…

 

先日お菓子の盗み食いから急性膵炎に発展した症例を共有します。

普段から盗み食いの常習犯のトイプードルちゃん。

今回食べたものはコス○コで期間限定、抹茶のテリーヌとのこと。

どんなもの?食べた量は…?

 

経過は盗み食い翌日に下痢と嘔吐。

元気はあったので、下痢止めと吐き気止めの対症療法。

ところが翌日からぐったり!

まだ吐いていて、食いしん坊なのに食欲なし。

 

さすがに対症療法では心配なので、最初の検査として超音波検査でお腹の中をチェックしたのが上の画像。

普段は頑張らないと描出できない膵臓がパンパンに腫れている!!​

症状と画像から急性膵炎を疑い、血液で炎症マーカーを追加検査。
 

結果、上限越え!?

普段他の病気でもあまりこんな数値は出ないので、ちょっと緊張しました。

 

ということで

・症状(嘔吐、食欲ゼロ、元気消失)

・超音波画像

・炎症マーカの上昇

以上の結果から「急性膵炎」と診断しました。

 

血液検査での膵臓マーカーとしてリパーゼや膵特異的リパーゼなどの項目もありますが、膵臓の指標といわれている割に他の病気でも異常値が出るそうなので血液検査単独では診断できません。もぐ動物病院では上記の3つそろった症例を総合的に判断して急性膵炎としています。

 

さて治療ですが、今回は炎症マーカーが高すぎたので、

膵炎治療薬としてブレンダという薬を使いました。

他に肝臓や腎臓の数値も若干高かったものの、腹水貯留やショック兆候はなかったので、ストレスと費用を相談して入院ではなく通院。

・皮下点滴

・吐き気止め

・ブレンダ

食事が原因で、細菌感染症ではないので抗菌薬は使いません。

すると翌日から徐々に元気になり、3日目でほぼ絶好調!

たまたまかもしれませんが、とても良く効いてラッキーでした。

 

急性膵炎はあまり多い病気ではない印象ですが、

年に数件、本格的で緊張感のある症例に遭遇します。

もちろん同じ病気でも軽症から重症例まであるので、実際はもっと多く、

軽い嘔吐で終わってしまう症例などは、

胃炎として見過ごしていることもあるかもしれません。

 

今では膵炎治療薬がありますが、以前は対症療法が基本だったため、

今回のようなケースでは重症化して長期入院になったり、

時に命を落とすようなこともありました。

ブレンダは膵炎治療薬ですがを治す薬ではなく、白血球による炎症を抑えるといった薬ですので、確定的かつ重症化の一歩手前で投薬できると有効性が高そうです。

メーカーは5日間投与を推奨しています。

 

ちなみに今回食べたのはこちらですが、

100gあたりの脂質がほぼ1/4の24.6g!!

一般的なドッグフードの脂質が10-15g程度なので、かなり油っぽかったですね。

ホワイトチョコレートのせいかな…

 

中毒物質が入っていなくても、催吐処置をしてあげれば急性膵炎を予防できたかもしれない…

今までも日常的に盗み食いしているので、つい油断しました。

後になって反省の症例です。

 

ちなみにチョコレートの多量摂取は、カフェイン中毒だけでなく脂質による急性膵炎のリスクも高いと考えられています。

カフェイン入ってないですが、ホワイトチョコレートもやっぱり吐かせるべきかも!
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